News

民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」 Mission1ランダー(月着陸船)の最終デザイン完成

2020年7月30日

2021年中に組み立てに着手、2022年に打ち上げ予定

(HAKUTO-Rのランダー(月着陸船)のイメージ)

株式会社ispace(本社:東京都港区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)は、2020年7月30日、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」のMission1で実際に月に行く予定のランダー(月着陸船)の最終デザインを公開しました。

HAKUTO-Rのランダーは、着陸脚を広げた状態で幅約2.6m 、高さ約2.3m、重さ約340kg(ドライマス)と、2018年9月に発表したデザインに比べコンパクトかつ低重心になりました。月への航行ルートに低エネルギー遷移軌道をとることで推進剤の消費量を最小限におさえ、燃料タンクを小型化しました。

また、ランダーの上部には約30kg[*1]の重さのペイロード(宇宙機に搭載する荷物)の搭載が可能で、HAKUTO-Rのコーポレートーパートナーである日本特殊陶業株式会社の全固体電池をはじめ、科学探査または実証試験用の機器を月に運ぶ計画であり、現在は残り数kgの最終積載枠を調整しています。また、HAKUTOのクラウドファンディング支援者のお名前を刻印したパネルも月面に届ける予定です。

振動や温度、高い放射線量といった厳しい宇宙環境に耐え月までの道のりを自力で航行するランダーは、地球や宇宙空間、月を撮像するためのカメラや、航行中の姿勢を制御するための装置や位置を把握するセンサー類、着陸時の誘導制御や衝撃吸収等、安全に月面へ着陸するための数々のテクノロジーを備えています。

さらに、既に契約を結んでいるSpaceX社のロケット、ドレイパー研究所の誘導・航法・制御システムに加え、HAKUTO-Rの月着陸ミッションの成功に重要な役割を果たす推進系については、宇宙機および推進系の分野で世界的な評価を得ているドイツのアリアングループのスラスターを採用しました。

HAKUTO-Rでは2021年のMission1打ち上げを目指してきましたが、一部の部品でミッション運用に支障をきたすリスクが発生しました。顧客の荷物を確実に月面に届け、ミッションを成功させるためには、既存のスケジュール内ではリスクを十分に下げることが困難と判断し、部品の製造とその試験・解析のために、Mission1の打ち上げ予定時期を2022年[*2]に変更いたしました。打ち上げロケットは、引き続きSpaceXのFalcon9で、2022年[*2]の打ち上げに向け時期の調整を行っています。

HAKUTO-Rは、パートナー企業の皆様、HAKUTO-R SUPPORTERS CLUBの皆様、そして多くの皆様の力を借りて、課題を一つ一つ解決しながら、月面着陸に向けて一歩ずつ進んでまいります。

今後は、9月までにランダーのCDR(詳細設計レビュー)を終え、STM(熱構造モデル)の製作および試験に進むとともに、地上からのオペレーションの核となるミッションコントロールセンターの設計および準備を進め、より具体的な運用計画を構築していきます。2021年[*2]には実際に月に着陸するランダーの部品の組み立てを本格的に開始し、その後宇宙の環境試験を実施した後に打ち上げ地であるアメリカへ輸送を行い2022年[*2]の打ち上げに備える予定です。

■HAKUTO-R代表 袴田武史のコメント

「ようやく、実際に月に着陸するランダーのデザインが完成しました。チーム一丸となって開発を進めてきたランダーが形になることは本当に嬉しいですし、HAKUTO-Rのパートナー企業の皆様をはじめこれまでご支援いただいたすべての皆様に感謝申し上げます。一方で、課題も見つかり、ミッションを成功させるために、スケジュール変更を決断しました。これまでも多くの困難がありましたが、多くの人の力で、諦めずに現実解を見出して実行し、それらを乗り越えてきました。これからもさらなる困難が待ち受けているかもしれませんが、応援してくれている人、荷物を預けていただいたお客様のため。打ち上げを楽しみにしてくれたみなさんにはお待たせしてしまいますが、我々はHAKUTO-Rプログラムを成功させ、絶対に月に行きます。」

株式会社ispace http://ispace-inc.com/jpn

「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。2018年2月までにシリーズA国内過去最高額となる103.5億円の資金調達を実施。日本初民間開発の月着陸船による「月面着陸」と「月面探査」の2つのミッションを行うプログラム「HAKUTO-R」を発表。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動。

HAKUTO-R http://ispace-inc.com/hakuto-r

HAKUTO-Rは、ispaceが2023年[*3]までに行う予定の民間月面探査プログラムです。独自のランダーとローバーを開発して、2022年3に月面着陸と2023年[*3]に月面探査の2回のミッションを行う予定です。SpaceXのFalcon 9を使用し、それぞれ2022年[*3]に月面着陸ミッション、そして2023年[*3]に月面探査ミッションの打ち上げを行う予定です。

[*1] ペイロードのサイズは2020年7月時点の想定です。その内一部のペイロードについて顧客に販売することを想定しています。

[*2] 2020年7月時点での想定

[*3] 2020年7月時点での想定

PDF
一覧に戻る