2021年8月25日
Stardust、University of Technology Sydney、EXPLOR Space Technologiesと覚書を締結
株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役: 袴田武史、以下 ispace) は、当社子会社であるispace Europe SA (以下ispace Europe), Stardust Technologies Inc. (以下Stardust社)、University of Technology Sydney(以下UTS)、EXPLOR Space Technologies(以下EXPLOR社)との間で、月資源利用の実証を目指すIn-Situ Resource Utilization(ISRU)を目的とし、VRや触覚技術を活用する多目的ロボットアームを搭載した月面探査ローバーを共同開発するための覚書を締結致しました。
今回の覚書では、参加各社が下記を中心とする項目を検討することが計画されています。
1. 宇宙資源や宇宙医療、STEM(Science Technology Engineering and Mathematics)教育のための仮想現実や触覚技術を利用したロボットアームと、そのアームを制御するソフトウェアの開発に協力する。
2. ispaceが開発する月面探査ローバーにStardust社・UTS・EXPLOR社が開発するロボットアームと3Dカメラを搭載し、そのローバーをispaceのランダー(月着陸船)に搭載して、ispaceのミッション3以降のミッションのローバー搭載ペイロードとして月に輸送する。
3. 科学的および商業的宇宙資源利用の目的で得られた月のデータと分析結果の取得および交換を行う。
4. カナダ宇宙庁とオーストラリア宇宙庁に、将来の月面ミッションのための技術開発、研究、打ち上げその他のミッション費用のための助成金を共同で申請する。
この共同開発の目的は、最終的に月の南極を探査し、月の資源を分析・収集することです。コンセプトとしては、触覚技術を備えたロボットアームを月面探査ローバーに搭載し、360度のカメラを装備することで、地球上の人々が月面探査ミッションを仮想現実で体験できるようにすることです。月面探査ローバーは、ispaceがミッション3 以降の次世代モデルとして開発する予定です。
覚書の調印は、コロラド州コロラドスプリングスで開催された第36回Space Symposiumの会期中に行われました。調印式には、調印者に加えて在米オーストラリア大使館の代表者がこの覚書を支援するオブザーバーとして参加しました。
● 株式会社 ispace Founder & CEO 袴田武史のコメント
「Stardust社、UTS、EXPLOR社とこの覚書を締結し、この画期的な取り組みを検討できることを嬉しく思います。より多くの方々に月資源利用への関心を高めていただくためには、このような様々な分野との連携が必要だと考えています。」
● Stardust Technologies Inc. Founder & CEO Jason Michaudのコメント
「人類が宇宙において継続的に活動していくためには今回のような企業間の関係性を増やしていくことが不可欠であり、あらゆる世代に利益をもたらすと考えています。ispace社、UTS、EXPLOR社とこの覚書に署名できることを誠に嬉しく思っており、宇宙における人類の未来を支える活動に繋げたいと考えています。」
● UTS Senior Lecturer & EXPLOR CEO Joshua Chouのコメント
「今回の覚書は、EXPLOR社の革新性とUTSの協力的な関係を改めて示すものであり、宇宙探査を加速させるための国際的な協力関係を発表できることを誇りに思います。」
● MP Member of the Canadian House of Commons Charlie Angusのコメント
「Stardust社は世界トップクラスの研究チームです。今回の取り組みを通して、Stardust社のイノベーションを推進できることを誇りに思います。彼らは月を目指しており、今回のミッションを通して、間違いなく到達すると思います。」
● MP Minister for Jobs, Investment, Tourism and Western Sydney, Australia – NSW Government The Hon. Stuart Ayres のコメント
「ニューサウスウェールズ州は宇宙技術や先端製造技術に長けた地域として知られていて、地域発の技術が月に届けられることを嬉しく思います。今回のミッションを通して、通信技術から遠隔操縦やロボット技術等のニューサウスウェールズ州の企業や研究者による複数の宇宙技術と知見を活用する予定です。」
本覚書における構想実施のスケジュールは現状未公開です。詳細な情報は今後改めて発表を予定しています。
● 株式会社 ispace (https://ispace-inc.com/)について
「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業です。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、150名以上のスタッフが在籍しています。2010年に設立され、今まで総計 約215.5億円超の資金を調達しています。当該資金は月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的としたランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)の開発に充てられています。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行っています。ispaceによる最初のミッションは2022年[i]と2023年[ii]に予定されています。ミッション1では、日本特殊陶業株式会社、MBRSC (Mohammed Bin Rashid Space Centre; UAE ドバイ政府宇宙機関)、JAXAおよびCSA (Canadian Space Agency; カナダ宇宙機関)のLEAP (Lunar Exploration Acceleration Program) の一つに採択された3社にペイロードとデータのサービスを提供する予定です。ミッション1で使用するランダーはドイツのアリアングループの施設で最終組み立てを行い、SpaceXのFalcon9でアメリカから打ち上げられる予定です。ispaceは、NASAのCLPS(Commercial Lunar Payload Services)プログラムに選出されたドレイパー研究所のチームの一員でもあります。ispaceとispace Europe S.A.はNASAから月面で採取した月のレゴリスの販売に関する商取引プログラムの契約を獲得しました。ispace Europe S.A.はESA (European Space Agency; 欧州宇宙機関) のPROSPECT(月面での水の抽出を目的としたプログラム)の科学チームの一員に選ばれています。
● Stardust Technologies Inc. (https://stardust-technologies.com) について
Stardust Technologies Inc. (Stardust社)はカナダの航空宇宙企業であり、本社はオタワ(オンタリオ州)に位置しています。2014年に設立され、革新的な科学技術や宇宙開発を通して将来的に人類の宇宙へのアクセスを開発することを目指しています。Stardust社はAI、XR、ロボット技術とSTEM教育を専門としています。最近ではカナダ宇宙庁やカナダ国立研究評議会とともにEDENプロジェクトで協力し、月面、火星や微小重力などという環境における精神健康維持のためのVR、神経系や触覚フィードバック技術を開発し、ISSや宇宙居住に滞在する宇宙飛行士のメンタルヘルス管理に役立てています。Stardust社はBeaverhouse First Nations、York 大学やHabitat Marteと複数の国際的なプロジェクトを設立し、人類のための安全な宇宙探査の枠組み作りに働きかけを行っています。
● University of Technology Sydney (https://www.uts.edu.au/) について
シドニー工科大学(UTS)はオーストラリアで有数の大学であり、世界をリードする工科大学になるというビジョンを掲げて大きく前進しています。工学部とIT学部での研究は、質の高さと産業に焦点を当てていることで有名です。活発かつ厳格な研究文化として、UTSが行う研究が社会や産業に変革をもたらすことを最優先にしています。特に、バイオメディカルエンジニアリングの分野では、実践に基づいた学習・研究及び産業界との連携において、オーストラリアをリードしています。2017年に設立されたバイオメディカルエンジニアリング学部は、ERA5ランキング(2014年と2018年)を受賞し、オーストラリアで3つしかないバイオメディカルエンジニアリングセンターの1つで、その研究成果は標準を大きく上回ると認められています。
● EXPLOR Space Technologies (https://www.explorespace.com.au) について
EXPLOR Space Technologies(EXPLOR社)は、宇宙生物学や宇宙医療技術関連の製造及びサービスを専門とするオーストラリアの航空宇宙企業で、宇宙開発の人的要素に焦点を当てています。シドニーに本社を置き、日本と米国にオフィスを構えています。2018年にDr. Joshua ChouとAnthony Kirollosによって設立され、宇宙で人類が生存するための技術を開発し、その技術を地上での医療に転用することを目的としています。主な業績として、生物学や薬学の研究を目的とした、模擬微小重力ランダムポジショニングマシン(RPM)の製造や、自律型探査ロボット、医療センサーを搭載した宇宙環境用スーツ、宇宙居住施設の開発などがあります。従来の宇宙技術を一新する手法を提供することで、人類の活動を中心とした宇宙経済圏の開発に取り組んでいます。
[i] 2021年8月時点での計画
[ii] 2021年8月時点での計画