2024年4月10日
株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)は、当社US法人であるispace technologies U.S., inc. (以下ispace U.S.)と、米国RTX 社の子会社であり、小型人工衛星の製造およびミッションサービスを手掛けるBlue Canyon Technologies社(以下Blue Canyon社)との間で、2026年[i]に予定されているispace U.S.のミッション3でリレー衛星として月周回軌道に展開する2基の小型衛星バス(Venus級)の設計・製造に関して契約を締結しましたことをお知らせいたします。
(左からispace U.S. Director of Business Development ボブ・コーン、EVP of Engineering ライアン・ウィットレー、CEO ロン・ギャラン、Blue Canyon社 GM クリス・ウィンスレット氏、M3 Program Managerカイル・ウェッドマーク)
Blue Canyon社が開発する2基の小型衛星(Venus級)は、ispace U.S.が開発するAPEX1.0ランダー(月着陸船)に搭載され月の裏側、南極付近に位置するSchrödinger Basin(シュレーディンガー盆地)へ着陸する前に月周回軌道上で展開される計画です。月周回軌道上では、通信装置を搭載した小型衛星が月の裏側の着陸地点と地球を結ぶ通信を中継し、月面のランダー及びペイロードからの高速データを地球上で受信することを可能にします。この通信システムは将来的に他の月ミッションでも商用利用することが可能です。ispace U.S.はこの通信システムを、ミッション開始後、数年にわたって後続のミッションや顧客向けサービスに活用する計画です。
ispace U.S.は、Team Draperの一員としてアメリカ航空宇宙局(NASA)の商業月面輸送サービス(CLPS: Commercial Lunar Payload Services)のタスクオーダーCP-12に採択されており、ミッション3においてNASAによる複数の科学的ペイロードを、月の裏側、南極付近に位置するシュレーディンガー盆地へ輸送する計画です。本契約の締結は、タスクオーダーCP-12の実現に向けて活用されるだけでなく、月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供するというispaceのビジョン実現に向けた取り組みにおける更なる前進でもあります。
ispace U.S.が開発するAPEX1.0ランダーは、現在、ispaceが提供可能な最も高性能な商業ミッション向けのランダーの一つです。2023年4月にミッション1を行ったシリーズ1ランダーから得られたデータやノウハウを活用し、更なる性能の強化を行っています。シリーズ1ランダーの10倍以上のペイロード容量となる、最大300kgのペイロードを月面に輸送可能な設計であり、将来的には拡大する顧客の要求に応えるために、APEXシリーズのペイロード容量を段階的に増加させ、最大500kgのペイロード設計容量の実現を目指しています。地球と月の間のシスルナ空間、および月の裏側から地球への通信をサポートする上で最適な、リレー衛星を搭載する専用のペイロードエリアを完備しており、月の周回衛星や、月面ペイロード、月面展開ペイロード(小型ローバー等)など様々なペイロードを月の裏側や表側、極域や赤道付近などに輸送可能な設計となっています。高度な構造耐久性、信頼性、製造性により、一貫した品質と性能の実現を可能にしています。
● Blue Canyon Technologies Inc. General Manager Chris Winslettコメント
「Blue Canyonは以前、Mars Cube One(MarCO)において火星への初の惑星間飛行をしたキューブサットで成功を収め、可能性を拡大する前例を作りました。それ以来、私たちはその成果を更に発展させており、今回ispace U.S.と新たなビジネスに取り組むことを楽しみにしています。」
● ispace U.S. Executive Vice President of Engineering Ryan Whitley コメント
「宇宙環境での運用実績を持ち、最高のパフォーマンスを発揮するBlue Canyonの技術力がispace U.S.が行うミッションの成功に役立つと確信しています。」
● ispace technologies, U.S., inc. (https://ispace-us.com/)について
コロラド州デンバー郊外に位置する、株式会社ispace のUS法人。地球から月への輸送サービスを政府及び民間顧客に提供する米国の月開発企業。月の資源活用に着目し、月、及び地球と月の間において人類の生活圏、経済圏を構築することを目指している。ispace U.S.は米国で設計・製造・打ち上げが行われるAPEX1.0ランダー開発の中心地であると同時に、北米における事業の拠点としての役割を担う。Team Draperの一員として、アメリカ航空宇宙局(NASA)の商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services, CLPS)に採択され、NASAが後援する3つの科学ペイロードを月周回軌道及び月面へ輸送する予定。ispace U.S. CEOのRonald J. Garan Jr.は元NASA宇宙飛行士であり、宇宙産業における第一人者。彼を含むispace U.S.の経営陣には、米国の数々の宇宙プログラムにおいて活躍したプロフェッショナルが集結。
● 株式会社ispace (https://ispace-inc.com/jpn/)について
「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、現在約300名のスタッフが在籍。2010年に設立し、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営した。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行う。2022年12月11日には SpaceXのFalcon 9を使用し、同社初となるミッション1のランダーの打ち上げを完了。続く2024年冬[ii]にミッション2の打ち上げを、2026年[iii]にミッション3、2027年に[iv]ミッション6の打ち上げを行う予定。ミッション1の目的は、ランダーの設計および技術の検証と、月面輸送サービスと月面データサービスの提供という事業モデルの検証および強化であり、ミッション1マイルストーンの10段階の内Success8まで成功を収めることができ、Success9中においても、着陸シーケンス中のデータも含め月面着陸ミッションを実現する上での貴重なデータやノウハウなどを獲得することに成功。ミッション1で得られたデータやノウハウは、後続するミッション2へフィードバックされる予定。更にミッション3では、より精度を高めた月面輸送サービスの提供によってNASAが行う「アルテミス計画」にも貢献する計画。
[i] 2024年4月時点の想定
[ii] 2024年4月時点の想定
[iii] 2024年4月時点の想定
[iv] 2024年4月時点の想定