2025年6月24日
株式会社ispace(東京都中央区、代表取締役:袴田武史、以下ispace)(証券コード9348)はMission 2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”(以下ミッション2)のRESILIENCEランダー(月着陸船)によって2025年6月6日に実施された着陸シーケンスに関して、東京・日本橋にあるHAKUTO-Rミッションコントロールセンター(管制室)で得られたフライトデータの解析を完了いたしました。その結果、レーザーレンジファインダー*¹(以下LRF)のハードウェア異常が着陸未達の技術的要因であることを特定し、その異常の背景として可能性が高い要素の絞り込み、今後の対策の検討、また後続ミッションへの影響分析が完了したことを以下の通りお知らせいたします。
*¹ レーザーにより目標物との距離を計測する装置。ランダーから月面までの高度を測定するため利用
- ミッション2軟着陸未達の要因分析について
- 着陸日(2025年6月6日)時点
当日の会見において、着陸未達が確定後に判明した事象として1)ランダー姿勢がほぼ垂直であったこと、2)LRFでの有効な測定値の取得が遅れていたこと、3)月面着陸に必要な速度まで減速が出来ていなかったこと、結果的に4)月面へハードランディングした可能性が高いことをお伝えすると共に、これらの要因特定を進める旨を発表しました。
- 2025年6月24日時点での要因分析結果
着陸日以降、ランダーから取得されたテレメトリの解析を通じて、本事象がソフトウェア上の問題ではなくハードウェア異常にあること、またその中でも推進系の異常や電力等その他のシステム異常ではなく、LRFのハードウェア自体の異常が着陸未達の技術的要因であることを特定しました。具体的には、航行中にLRFが故障や性能劣化した可能性や、降下時のLRFの性能が事前の想定よりも低かった可能性が高いと考えられますが、これらの異常が発生した背景として考え得る事象についても絞り込みを実施しています。今後、以下3に記載の対策や改善策を実行すると共に、後続するミッションの開発計画の中で、更なる検証および改善をしてまいります。
- 後続ミッションへの反映
以上の技術要因分析を踏まえ、当社は以下の改善策を今後実施予定です。
- LRFを含む着陸センサの検証戦略・計画の見直し
- LRFを含む着陸センサの選定・構成・運用の見直し
さらにはより広範な技術的強化策として以下を実行する方針です。
- 第三者専門家を含む「改善タスクフォース」の立ち上げの上、後続ミッションに向けた開発上の対策の検討
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)からの技術支援の拡張によるさらなる技術力の向上
- 後続ミッションへの影響について
本日発表の技術要因分析による追加の影響としては、現時点の合理的な見通しとして、LRF等の着陸センサの再選定や試験計画の見直し及び拡充等に係る費用として、後続するミッション3(正式名称:Team Draper Commercial Mission 1)及びミッション4(旧ミッション6)で合わせて最大15億円程度の開発費用増を見込んでいます。本費用は打上げ予定としている2027年までの期間に亘って段階的に計上されることを見込んでいるため、引き続き、2026年3月期の通期連結業績予想を修正すべき影響はない見込みです。また本技術要因分析を踏まえ、後続するミッション3及びミッション4の現時点の打上げスケジュールに与える影響は無い見込みです。
- 株式会社ispace 代表取締役CEO & Founder 袴田武史のコメント
「6月6日、ミッション2による月面着陸再挑戦は、ispaceのチームが一致団結し、最大限の努力をしたにもかかわらず、最後の最後に着陸出来ず、非常に悔しい結果となりました。株主・ペイロードカスタマー・HAKUTO-Rパートナー・政府関係者の皆さまなど、多くのご支援、応援を頂いた方々の期待に沿うことが出来なかったことも、申し訳ない想いです。しかし、そんな中でも私たちは前進するため、少しでも早く原因を究明し、次のアクションに繋げる強い意志を持ち続けてきました。ミッション2の軟着陸未達となった原因分析結果を透明性高く示すため、本日までの2週間と4日の間、従業員の一人一人が精力的に力を尽くしました。
ispaceは失敗を単なる技術的な失敗で終わらせず、決してここで立ち止まらず、関係者の皆様からの信頼を取り戻せるよう、常に挑戦者として、次のミッションに向けて再び歩み始めます。 “Never Quit the Lunar Quest” 」
ミッション2マイルストーン詳細
- 株式会社ispace ( https://ispace-inc.com/jpn/ )について
「Expand our planet. Expand our future. ~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、現在約300名のスタッフが在籍。2010年に設立し、Google Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営した。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発。民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行う。2022年12月11日には SpaceXのFalcon 9を使用し、同社初となるミッション1のランダーの打ち上げを完了。続くミッション2も2025年1月15日に打上げを完了した。ミッション3(正式名称:Team Draper Commercial Mission 1)およびミッション4(旧ミッション6)は2027年に[i]打ち上げを行う予定。
ミッション1、2はR&D(研究開発)の位置づけで、ランダーの設計および技術の検証と、月面輸送サービスと月面データサービスの提供という事業モデルの検証および強化を目的としている。結果、月周回までの確かな輸送能力や、ランダーの姿勢制御、誘導制御機能を実証することが出来た。ミッション1、2で得られたデータやノウハウは後続するミッション3へフィードバックし、より精度を高めた月面輸送サービスの提供によって、NASAが行う「アルテミス計画」にも貢献する計画。
- HAKUTO-R ( https://ispace-inc.com/jpn/m1 )について
HAKUTO-Rは、ispaceが行うミッション1およびミッション2を総称する、民間月面探査プログラム。独自のランダー(月着陸船)とローバー(月面探査車)を開発して、月面着陸と月面探査の2回のミッションを行う。SpaceXのFalcon 9を使用し、2022年にミッション1(月面着陸ミッション)のランダーの打ち上げを完了。また、2025年1月15日にミッション2(月面探査ミッション)の打ち上げを完了した。
オフィシャルパートナーである株式会社三井住友銀行により命名されたMission 2 “SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”には、新たな始まりやチャンスの意が込められている。
HAKUTO-Rはオフィシャルパートナーとして株式会社三井住友銀行、コーポレートパートナーとして、日本航空株式会社、三井住友海上火災保険株式会社、日本特殊陶業株式会社、
シチズン時計株式会社、スズキ株式会社、高砂熱学工業株式会社、SMBC日興証券株式会社、Sky株式会社、Epiroc AB、株式会社ジンズ、栗田工業株式会社が参加している。